サンゴの白化。
ほとんどの人が一度は耳にしたことがあるか、ニュース映像や写真を見たことがあるのではないでしょうか?

なぜ、これほど注目されるのでしょう?
サンゴ礁の近くで何千年も暮らしてきた様々な先住民族の言語で、「サンゴの白化」を意味する言葉は一つもない、と言われています。つまり、大規模なサンゴの白化は、ごく最近の現象なのです。
サンゴの白化は、1980年代から報告され始めました。
そして1998年。
インド洋、太平洋、ペルシャ湾、紅海、地中海、カリブ海沿岸・・・、世界各地でサンゴの大規模な白化が次々に報告されます。
少なくとも、32カ国、207のサンゴ礁域で75%ものサンゴが白化しました。
最大の原因は、海水温の上昇、と言われています。
サンゴの宝石のような美しい色は、実はサンゴに付着し共生している「褐虫藻」の色です。
褐虫藻(カッチュウソウ)は、きわめて小さい単細胞の藻類の植物ですが、光合成によって二酸化炭素を吸収し、サンゴにエネルギーを与えているのです。
サンゴは、褐虫藻と共生することによって二酸化炭素を吸収するという重要な役割を果たしているのです。(二酸化炭素吸収量は、人間が輩出する量の2%、という研究報告もあります)
しかし、海水温が30度を超えると、褐虫藻は、急速に光合成を弱めサンゴに栄養を与えなくなり、逆に毒性作用のある活性酸素を出し始めます。そしてサンゴは褐虫藻を自分の体から放出し始めるのです。
サンゴの白化は、褐虫藻がいなくなり、石灰質でできた骨格がむき出しになった姿です。
(さらに最近の研究で、30度を超えると、サンゴが、糖分を含んだ粘液を出し、それが有毒性をもつ細菌を増殖させ、褐虫藻を死滅させるメカニズムが報告されています。)
海水温の上昇が、サンゴと褐虫藻の共生を破壊して、
二酸化炭素を吸収して、海水魚の3分の2以上をはぐくむサンゴ礁の海域を変えようとしているのです。
話はそれだけではありません。
大気中の二酸化炭素濃度の上昇で、海が酸性化する問題があります。
炭素の、排出と吸収はおおざっぱに言うと次の通りです。
〈 排出 〉
化石燃料の放出 → 55億トン
森林破壊など土地利用の変化 → 10億トン
〈 吸収 〉
海洋 ・・・ 20億トン
森林・植物 ・・・ 10億トン
つまり、人間の活動によって、年間65億トンの炭素が大気に吐き出され、
海洋と陸地で30万トン吸収しているのです。
残る35万トン分が、毎年、温室効果ガス濃度を上昇させる増加分です。
そして「海による過剰な二酸化炭素吸収」によって、海の酸性化が起こっています。
海が酸性化すると、炭酸カルシウム濃度が低下して、サンゴの体が溶け出します。
サンゴは石灰質ですから死滅するとさらに海を酸性化します。
今心配されているのは、こうした悪循環です。
このままのスピードで海の酸性化が進めば、
「二酸化炭素を吸収していた海洋が、逆に二酸化炭素を放出し始める可能性がある」(中沢清高・東北大教授)のです。
海の二酸化炭素の吸収量は、10年間で8000万トンのペースで減少している、という研究報告もあります。(南極周辺の大気データなどから算出。2007.1、国際研究チーム)
温暖化が、温暖化を加速させるのです。
サンゴ礁の海域には、10万種ともいわれる海洋生物種がくらしています。
大気中の二酸化炭素濃度が500ppmを超えると、これらの生物種の半数以上が絶滅します。
「2050年には、現在サンゴが生息している海域の98%が、サンゴが育成できない海域になる」(2007.1 アメリカ・イギリスなどの国際研究チームの発表)という警告も出されています。
サンゴの白化は、人間に対する悲痛な叫び声なのではないでしょうか。
★個々に起こるサンゴの白化は、高水温、低水温、強光、エルニーニョ現象などの異常気象、台風、排水、乱開発など様々な要因で起こりますが、世界各地で見られる大規模な白化の最大の要因・引き金は、海水温の上昇(温暖化)と考えられています。
★昨年(07年)も、沖縄・白保地区などで大規模なサンゴ白化が起こりました。
ハナヤサイサンゴの90%、ハマサンゴの30-50%が白化し、5%が死滅しています。
★海は弱アルカリ性です。この百数十年で海水の水素イオン濃度指数(ph)は0.1アルカリ性が弱まる酸性化が進んでいます。(現在8.1)
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テーマ:環境・資源・エネルギー - ジャンル:政治・経済